志望校、受験校を選ぶときに、意外にも通学時間を重視せず、後でいろいろな問題が出てくることがあります。
確かに、子供はいつまでも小さくありません。
小学校高学年でしたら十分に通える学校でも、通い始めは6歳の子供、小学校1年生ですので、通学にかかる時間や乗り換え回数なども考慮した上で決めたいものです。
まずお父さんやお母さんが通学時間に学校まで行ってみて、通学の電車やバス、乗り換えなどを体験してみると良いと思います。
もうずいぶん前の話ですが、私の娘が幼稚園で一緒で、娘とは別の私立女子校に行った子の例なのですが、朝の通学で、山手線五反田駅から目黒駅までの一駅を乗っていました。
定期入れに鎖をつけてランドセルにつなぎ、定期入れは制服のポケットに入れていたそうですが、小学校1年生の6月の1か月の間に、朝だけですが3回も電車の中で定期が無くなってしまいました。
電車が混んでいるのは言うまでもありません。
満員電車では、いつも目黒に着いたら、大人の腰の間から「降ります!!」と大きな声で言っていたそうです。
定期が最初に無くなったときは鎖が切れており、後の2回は定期が鎖からとれていたそうです。
定期がもぎ取られてしまうほどひどい混みようだという話です。
その話をお母様から聞いて、同じ娘を持つ親として、「子供たちもこんな思いをして学校に一生懸命通っているんだな」と思い、涙が出ました。
さて、女子校の私立小学校を中心に、生徒の安全確保を第一に、自宅から校門をくぐるまでの時間を60分以内と制限している学校が多く見られます。
60分以上必要とする通学時間のデメリットはあります。
特に小学校の低学年には、1日の学校生活を終えた後の帰宅時のバスや電車での下校は、体力的にも大きな負担となります。
帰宅するバスや電車の中で疲労困憊の末、ついつい居眠りをして、いつも降りる駅を通り過ぎ、はるか先の駅で親切な方にお世話になり、何とか帰宅するも、その時間は既に午後6時すぎ……という経験をされたご家庭が多くいらっしゃると思います。
これも経験として、自立への一歩とほほ笑んで子供の成長を見て、無事帰宅できたらよいのですが、大きな事故に巻き込まれない保証はどこにもありません。
私立小学校といっても中学年以上になると科目数も増え、想像以上に多くの宿題が出ます。
午後3時以降に下校して、帰宅してからの宿題は、夕食やお風呂など、就寝までの時間の配分を考えると、あまりにも余裕のない毎日を過ごすことになります。
また帰宅後の平日の習い事との両立が難しい状況となります。
高学年になると、放課後のクラブ活動の参加や各種行事の準備など、これまで以上に下校時間が遅くなることが必至です。
また当然のことですが、宿題がたくさんあるにもかかわらず、特に中学受験を考える中高年生は、学校帰りに塾に行くため、直接帰宅どころではありません。
学校から直接塾に行くことも多くなると思われますので、通学時間が長くかかることは明らかに大きなデメリットになります。
中学受験を前提に私立小学校を考える場合は、放課後に塾で勉強することを考慮すると、通学時間の短い私立小学校を選んだほうが良いように思います。
東京都心では、東京メトロ副都心線、大江戸線、南北線、JR新宿ライナーなどの開通で遠距離にある私立小学校への通学も便利になりました。
東京オリンピックを前に東京都心の交通機関はますます便利になることでしょうが、前述のようなことから、通学時間、遠距離通学には十分に配慮して、志望校を選ぶ理由の一つに加えていただきたいと思います。
自宅から校門まで50分をはるかに超えるような小学校は、とりあえず志望校から外すことをお勧めします。
小学校の子供の生活のサイクルを考えた場合、通学時間は50~60分ぐらいが妥当だと考えます。
当然ですが、交通費も学生割引があるものの、金額は考慮しておくべきでしょう。
女子校の小学校では、通学時間は非常に重要に考えているようで、「学校から半径何キロ圏内で、通学時間は50分まで」などと言われています。
私の知っている方の子供の受験(女子校)の面接では、やはり通学時間は非常にしつこく質問されたようです。
その方は、今住んでいるところから学校まで75分かかったそうです。
面接のときに学校側から「もしこの学校に合格された場合、ご両親は通学時間を短縮するお考えは何かございますか?」と問われたそうです。
ご両親はあらかじめ話し合って色々考えていたそうですので、すぐにお父さんが「私の実家に引っ越しするつもりでおります。通学時間は30分くらいです」と答えたそうです。
その方は合格しました。
特に、東日本大震災の後はまた一段と厳しくなったように思います。